水面の星たちの

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「やだよ。ゆりちゃんと一緒に見たい」  百合子は嬉しくなって笑った。 「じゃあ、今日見れなかったらいつか二人でどっか旅行に行こう。いや、見れても行こう」 「そうだね」  佐奈美も笑った。 「お小遣い貯めて行こう」 *****  私は雪に当たらない自分の巣で外を見つめていた。  湖が見えた。今は星はなかった。  寒さにはなんとか耐えられた。だけど空腹のせいで体に力が入らない。  太陽が流れていく。夜が近づく。 *****  佐奈美たちは夕ご飯を食べていた。 「ゆりちゃん。うち湯葉嫌いだから食べてー」 「えー。佐奈美湯葉嫌いなの?もったいない」  百合子は湯葉が結構好きだったので喜んで食べてくれた。 「佐奈美は工芸品作り盆彫だったよね」 「うん。ゆりちゃん染物だっけ」 「そうなの。それで染物教えてくれたおじいさんが面白くて、不思議な話をしてくれたの」 「へえ。どんな話?」 「実は、外にある湖の話」  百合子が佐奈美を驚かせるように眉を曲げて深刻そうな顔をした。 「え。怪談?」 「少し怪談っぽい。物語というか伝説なんだけど、あの湖は死者を取り込むんだって」 「……うわあ」 「まあそこまでは言い過ぎだって現実主義っぽいおばあさんが言ってたんだけどね。なんでもその人の望むものを見せてくれるらしいの」 「なにそれ。ちょっと見て見たいような怖いような」  佐奈美は窓の外に見える湖を見た。どう見ても普通の湖ではあったけど、近くにあるものだけにとても不気味に思えた。
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