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*****
あ、一番星。
夜になりかけの空に宝石みたいにそれはひとつだけ輝いた。私は少しだけ笑った。なんて力強いのだろう。私も頑張らなくては。
気づくと雪は止みかけていた。嬉しい。夜空は私を助けてくれた。
もっと星が見たくなって湖の方へと歩いて行った。空の赤い部分がどんどん小さくなって夜空へと変身する。一番星が一層輝く。
湖が今日もたくさんの星を映した。やっぱり不気味に思って空を見上げて安心する。よかった。星が輝いている。水面の星は偽物じゃない。
大好きな星に触れられる気がした。星空の真ん中に行ってみたい。
大丈夫。私の足元に星空はある。
星が私を取り込んでいく。ふわふわする。自分がどこにいるのかわからない。
恐怖が、夜空のように膨らんでいって。
ああ。夜空よ。どうか
*****
星空観察のために外に出た。佐奈美の願い通り雪は降り止んで頭上には満天の星があった。
「すごいすごい。雪積もってるし星三百個くらいあるしすごい」
「うん。あたしが前見たのよりすごい」
佐奈美も百合子もみんなも興奮して夜空を見上げていた。佐奈美は大満足だった。
ふと、湖を見た。湖はどこまでも黒かった。
「ゆりちゃん良かった。湖、特になにも映ってないよ」
「え、なにも?」
百合子も湖を見る。そして不安そうに口を開いた。
「……風も吹いてないのに」
「風?」
「湖、水面が揺れていなくて鏡みたい。普通だったら……」
「鏡ということは……あの星がみんな映るはずということ?」
「うん。どういうことだろう」
ふたりは顔を見合わせた。お互い眉をひそめて首を傾げていた。
そうしているとなぜかおかしくなってきた。佐奈美と百合子は声をあげて笑った。
「不思議だねー。不気味だねー」
「アンビリーバボーだよー」
そう。
くすぐったくて訳がわからなくて。
とてもワクワクした。
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