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雨がバスの屋根を打つ。
その日、僕はイヤホンを付けなかった。雨の音に耳をすませて、外の景色を約30分間、飽きもせず眺めていた。
雨が心地いい音楽を奏でる。時速60k/mで移り変わる景色。雨に濡れていつもと色の違う世界は僕を惹きつけた。
そしてまたいつものように3つのバス停に止まり、4つ目のバス停で図書館についた。
僕は雨は好きだけど、濡れるのは嫌いだ。
僕は走って図書館に行った。図書館はバス停の目の前にある。だから僕の体力でもなんとか走り切れた。
図書館の中に雨は降っていなかった。
本の匂いがして、読書の邪魔にならない音楽が流れていた。後ろを振り向くと、大粒の雨が絶え間なく降り続いているのがガラス越しに見えた。
僕はまた、お決まりの席に行った。(これもまた僕の中では)
それは背もたれがあって、しかもテーブルまである特等席だ。そこに荷物を置いて、本を取りに行く。
お決まりの席は取られたくないのだ。
その日の本は既に決まっていた。
ドストエフスキーだ。カラマーゾフの兄弟を読む。
あの本は長いし、名前は覚えにくいし、疲れる。
けれど読む価値は絶対にある。だってなかったら文学の最高傑作なんて呼ばれない。
そして日が暮れた。
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