君にもう一度あの歌を

毛虫扱いしたらファンに殺されるだろう。けれど毛虫と同じように梨花子の身体を動けなくさせる。なるべく台座の上にいる巨大な招きネコに焦点をあわせようとするけれど上手くはいかなかった。

派手で可愛らしい衣装を着た女の子たちが歌いながら踊っている。

大須オーガニックドールズ。

彗星のように突然現れたご当地アイドルだ。イベントのチラシなどで名前だけは知っていたのだが梨花子が実際に彼女たちのパフォーマンスを見るのは初めてだ。大須オーガニックドールズだけではなく、テレビで他のアイドルがパフォーマンスを始めると梨花子は固まってしまう。

キレキレのダンスを踊る、センターの星山綾火と目が合ったような気がした。

梨花子はぎゅうっ唇を噛み締めた。頭の中を爆音で流れている今歌われている曲ではないものに乗っ取らないために。