24人が本棚に入れています
本棚に追加
大久保直生(おおくぼすなお)は梨花子の小学校、中学校の時の同級生だ。彼は勉強が飛び抜けてできるわけでも、クラスで一番足が速いわけでもなかったのだが、明るいムードメーカーでクラスの人気者だった。
成績は良くないくせに妙に機転の利く子どもで、毛虫で動けなくなっていた梨花子に目隠しをしてくれたのは大久保その人だった。
機転が利くだけに、悪気がない事を言いもするし、行動に移すこともある。息を潜めるように見つからないように大須商店街に帰ってきた。うまくいっていたと思っていた。その油断のせいだろうか? 絶対に見なかった事にできない大久保に見つかってしまったのは。
「鬼頭さん、職場はどこ?」
「あ、この近く。大久保くんは?」
大久保は、法被に入っている「大須案内人」の文字をポンと叩いた。
「あー。これは、じいちゃんの趣味に付き合ってて。ボランティアなんだ。あ、じいちゃんもそこにいるよ。呼んでいい? 鬼頭さんがいるって言ったら喜ぶと思うよ。大須の有名人だし」
.
最初のコメントを投稿しよう!