4人が本棚に入れています
本棚に追加
心中
先月、仕事の接待でキャバクラに連れて行かれたのだが、その時から同行した後輩の様子がおかしくなった。
聞けば、店で働いているキャバ嬢の中に高校時代の彼女がいたという。
かわいいが地味で、とても夜の店でなど働けないタイプだから気になり、連絡先を聞き出して話を聞いたら、実家に借金ができて、それを返済するためにキャバクラで働き出したということだったらしい。
元々好きだった相手だから、同情心も手伝って親身になり、色んな相談に乗るようになった。その内容が重いものばかりだから、後輩の様子にまで影響が出ているようだ。
お前まで苦しんでも仕方がないぞと諫めたり、冷静になって距離を置けと説得したりしたのだが、後輩は聞く耳を持たない。
そしてある日突然会社を休んだかと思うと、それきり出社しなくなった。
連絡を取ろうとしても一切通じないし、自宅にもいない。実家にも戻っていないという。
どこへ行ったのかと思った時、もしやキャパ嬢の元カノの所にいるのではという考えが浮かんだ。
あの店に行き、彼女の住所を聞いてそこを訪ねてみよう。
仕事終わりに早速キャバクラへ足を向けたのだが、その途中、道のりをたくさんサイレンがふさいだ。
野次馬がたかっている辺りで話を聞くと、近くのビルから飛び降り自殺をした人がいたらしい。
何故かとてつもない不安に襲われ、俺は以前行ったキャバクラに急いだ。
店の人に、後輩がここの女の子の所へ転がり込んでるかもしれないと理由を話し、あの子の所在を訪ねる。するととんでもない返事が戻ってきた。
後輩の元カノだった女の子は二年前に自殺しているというのだ。
詳しく尋ねると、二年前、あの子は確かにこの店で働いていた。だがどうしても夜の世界の空気に馴染めず、かといって、家族のためには働かない訳にもいかずという状態に苦しみ、日に日に様子がおかしくなって、ある日店を飛び出し、突発的に近くのビルから飛び降りてしまったらしい。
その話を聞いた瞬間、俺は、ここへ来る途中の自殺騒ぎを思い出した。
最初のコメントを投稿しよう!