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(;'A`)「え?」
その少女の言葉は、どこか悲痛な鋭さを孕み、ドクオの胸に突き刺さった。
戸惑うドクオを置いて、少女は再び振り返るとドクオの方へと歩き出した。
「ちょっと使ってた短剣の斬れ味が悪くなって来ちゃってさ。新しいのでも買おうと思ったんだ」
その声には刺々しさは無く、先程までのような明るい声色だった。
(;'A`)「いや、この時間じゃ店開いて無いだろ……」
ドクオの的を射た意見にも、何処吹く風と言わんばかりに少女は続ける。
「この時間じゃあね。朝まで待てば開くでしょ?そしたらお願いすれば良いんだよ」
少女はまるで普通であるかのように言い放つ。
確かに一理あるが、この時期、幾ら夏間近とは言え、外で夜が明けるのを待つと言うのは、かなり辛いものがある。
ましてや、軽装備の少女となれば尚更である。
例え本人が慣れているとしても、聞いたからにはドクオは放っておく事は出来ない。
何とか思い留まらせる方法を思案する。
そこで、ドクオはある事を思い出す。
(;'A`)「……なぁ、新しい短剣が手に入れば良いんだよな?」
ドクオの言葉に少女が足を止める。
「えっ?」
少女が思考停止している間に、ドクオは《窓》を呼び出し、操作する。
そして、あるものを取り出し、少女へと差し出した。
('A`)「これならどうだ?」
それは、先日に攻略した洞窟ダンジョンのボス部屋後の宝箱入手品の一つ《リッパーエッジ》だった。
少女は硬直して差し出された短剣を見詰めていた。
ふと、我に返った少女が問い掛ける。
「良いの…?」
少女はドクオの顔色を窺うように訊ねる。
('A`)「見ての通り俺は片手剣士だからな。俺が持ってるより、短剣使いのあんたが持ってた方がこいつも喜ぶと思うぜ」
その言葉を聞いた少女は恐る恐る差し出された短剣を受け取る。
「つ、強い…ほ、本当に良いの?」
('A`)「おう、大事に使ってやってくれ。あ、礼とかはいらないからな」
少女は暫しの間、短剣を見詰めた後、決心したように腰の部分に括り付けた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて、貰うね。お蔭で手間が省けたよ」
そう言うと、少女は踵を返し、歩いていった。
と、思うと立ち止まって半身だけ振り返り、口を開いた。
「短剣、ありがとう。大事に使わせて貰うね。それじゃあね、剣士さん」
少女は再び背を向けると、ゆっくりと歩き出し、月光が届かない夜の闇へと消えて行った。
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