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 それから三年の月日が流れた。タンゲは己の野心の存在を誰にも打ち明けなかった。しかし、近しい人々は彼の異変に気が付いていた。彼の顔つきは変わった。以前と比べ、新鮮さや自然さ、丸みや柔らかさが消えた。瞳は輝きを無くして冷たく据わり、聡い顔にはなったが表情が固くなった。雰囲気は全体に暗さを纏っている。実際、タンゲは最近、自分の回りの世界が暗くなったように感じていた。  この三年間、タンゲははたから見れば順調だった。生まれつき頭にも運動神経にも恵まれていたので、士官学校では常に優秀な方だったが、軍に入ってからもそうだった。彼は持ち前の頭の回転の速さ、完璧主義さ、そして生真面目な性格で、与えられた任務を次々と成功させ続けていた。現在、彼は二十六歳で小隊長である。任官したのは二十四歳のときだ。この国は十五年前から敵国と停戦状態にあるため、戦争で武勲を挙げることが出来ない。だから、派手な記録ではないにしても、その年齢で小隊長というのは早いほうだ。彼はこの時点で既に周囲からの期待も大きく、目立つ存在だった。     
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