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――仮にやらぬ方の人生を取ったとして、そもそも俺は諦められるのだろうか。諦められず、いつまでもやらぬ方を取ったことを後悔するのではないだろうか。やると決め、成れなければ、俺は死ぬしかない。しかし諦めて今まで通りなんの目的も無い人生を送るなんて、死んでいるのと同じじゃないか? そうだ……そうじゃないか――  その時、彼は胸の内側に異様な喜悦がむくむくと盛り上がってくるのを感じた。 ――夢を追わない利点などどこにあるだろうか? 決めたぞ。俺は絶対に偉大で有名な将校になろう。どんなに苦しくてもだ。死んでもなろう。なれなければ生きている意味なんてない――  彼の心に感動が広がった。それは内に薄暗い不安を秘めてはいたが。彼はその野心、そして極端さが、自分にかけた苦痛に満ちた呪いであるとは知らなかった。  彼が地獄へと向かい始めたのは、自己愛の種が撒かれたときの事だから、子供の頃か、あるいはもっと前のことかもしれない。この決意は、これまで地獄へ向かって歩いていたのが、地獄へ向かって走り始めたという起点にすぎない。だが、この春の夜の強烈な決意から、彼の人生が大きく動き始めたことは確かだ。
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