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「できあがり」
彼女の声に、姉が包みから菓子を出しはじめた。
襟首に散った髪を掃えば、渡した鏡越しに小さな声がする。
「……さっきの王子の話、ホント?」
意外な言葉に少し驚いたが、彼女は微笑んで鋏をしまう。
「首輪で繋いでなんかいないわよ?」
そっちじゃなくてと、頭を振られる。
「あんなに……ふわふわしてんのに?」
「悪いことはたくさんしていたわ。だけど最初に、わたしが勝ったから、もうしない約束」
「どうやって?」
「それは内緒」
ただ、王子様を見つけたら絶対離さないの、と彼女は微笑む。
「強さは力だけじゃないのよ?
方法は、10才のあなたでも、きっと分かるわ」
きょとんとされるが、にこにこしたまま布を外す。
まだ納得していない姪をよそに、彼女は手を叩いた。
「内緒話はおしまい。次はこちらにいらっしゃい?」
すっかり準備を終えた姉が砂時計を片付ける。
そしてポットから暖かな紅茶が注がれた。
「さ、女の子のお茶会、しましょう」
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