優友

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「……そうか」  結局、自分は到底適わないのだと思い知らされた。諮夜も相楽も、彼に取られてしまった。  いや、元々が自分のものではないのだから、「取られた」という表現はおかしいのか。  ……諮夜は、俺のものじゃない。  中学生の頃から何度も思ってきた筈の事を、今更また、実感していた。 「ならなぜ、俺の記憶だけを残した?」  それなら、諮夜の記憶を残してやった方がよかった筈だ。彼の想いを伝えてやればよかったのだ。その方が、諮夜も救われただろうに。 「だって僕は、鬼防君に会いたかったから」  そう言って相楽は、崇生へと手を伸ばす。 「僕が初めて、触れる事の出来たひと。今が幻じゃないと、教えてくれたひと。僕の存在を、信じてくれたひと。そして僕を……」  崇生の制服を掴んで、声を震わせる。 「人間の僕を、見つけてくれたひと」  あの日のように胸へと頬を預けて、崇生の背中へと手を回した。 「鬼防君。……大好き」  声と同じに震える背中を、抱き締める。あの時は、壊れそうだと思いながら抱き締めた。だが今は、消えてしまわないようにと、願いを込めた。
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