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職員室からの帰り、夕陽を受けながら廊下に佇む影に、鬼防 崇生(きぼう たかお)は足を止めた。
相手は眩しそうに目を細めながら、それでも窓に肘を付き、夕陽を見つめている。何してんだ、と崇生が声をかける前に振り返り、笑顔を見せた。
「崇生」
今度は夕陽に背を向けて、窓へと凭れかかる。それがサマになっているところが、こいつの嫌味なところだと思う。
少し長めの前髪が、風を受けて舞い踊る。
「山本、なんだって?」
担任を当然のように呼び捨てにして、あたかも崇生を待っていたとでもいうふうに口角を上げてみせる。
「てか、お前。部活は?」
その言葉に一瞬唇を尖らせて、崇生の幼なじみ、結城 諮夜(ゆうき とうや)は背中を窓から引き剥がした。
「そこはほれ。俺、掃除当番だから」
人差し指を突き立て、それを振りながら言ってのける。
「嘘つけ」
なんでこいつは、こんなにテキトーなのか。
溜め息一つ吐いて崇生が横を通り過ぎようとすると、突然腕を掴まれた。
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