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相楽がどちらを選びたいのかを知りたくて、訊いてみた。崇生としては『人間の記憶』を選んで欲しいと思う。だが冷静に、違うだろうな、とも思っていた。先程からの相楽の台詞は、「自分は人間ではない」と何度も語っていたのだから。
「そうだね、僕の中ではやっぱり『黒い神様』かな」
判っていた事なのに、なぜか怒りが込み上げた。
「じゃあなんで、お前は今、人間なんだッ」
訳の解らない苛立ちに任せて、言葉を吐き捨てる。それに憐れむような視線を向けてきた相楽は、小さく呟いた。
「『彼』が、望んだからだよ」
目を剥いて、固まった。
俯くようにして、相楽は幸せそうに微笑んでいる。
目の前が真っ暗になった気がした。
――それは、相楽が望んだ事ですらなかったのだ。
自分は、相楽に何を望んでいたのかと思う。相楽がどんな台詞を吐いて、何を選べば、自分は満足だったのかと……。
「彼って?」
さして興味もないのに、口にしていた。
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