優友

10/15
前へ
/110ページ
次へ
 相楽がどちらを選びたいのかを知りたくて、訊いてみた。崇生としては『人間の記憶』を選んで欲しいと思う。だが冷静に、違うだろうな、とも思っていた。先程からの相楽の台詞は、「自分は人間ではない」と何度も語っていたのだから。 「そうだね、僕の中ではやっぱり『黒い神様』かな」  判っていた事なのに、なぜか怒りが込み上げた。 「じゃあなんで、お前は今、人間なんだッ」  訳の解らない苛立ちに任せて、言葉を吐き捨てる。それに憐れむような視線を向けてきた相楽は、小さく呟いた。 「『彼』が、望んだからだよ」  目を剥いて、固まった。  俯くようにして、相楽は幸せそうに微笑んでいる。  目の前が真っ暗になった気がした。  ――それは、相楽が望んだ事ですらなかったのだ。  自分は、相楽に何を望んでいたのかと思う。相楽がどんな台詞を吐いて、何を選べば、自分は満足だったのかと……。 「彼って?」  さして興味もないのに、口にしていた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加