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「彼は、僕に『優友』って名前をくれたひと。最期に僕が人間になる事を願って、残りの命をくれたひと。……そして、結城君の『初恋』の相手」
「な…っ」
「そして結城君は、彼が一番会いたいと望んでいた相手なんだ」
驚いた崇生の顔が面白かったのか、相楽がクスクスと笑う。
「彼は、結城君の従兄だよ。結城君に、陸上の楽しさを教えたひと。中学の頃まで、結城君が一番大好きだったひと」
はっきりと言葉にされて、会った事もない相手に嫉妬する。崇生の知らない『彼』は、その死で諮夜が部活に出るのをやめる程、諮夜の心を掴んで放さなかったのだ。そして、相楽にこんな幸せそうな微笑みを浮かべさせる程、相楽の心の拠りどころとなっている。
「だから。諮夜の傍に来たのか」
彼が諮夜の傍にいたいと望んだから。その為だけに、自分達の前に現れたのか。
「それは、僕の望み」
「え…」
「彼はね、結城君に会いたいと望みながら、それを願わなかった。会いに来る事も出来たのに、それをしなかった。最期に会えた時、僕に残りの命を与えても構わないと思う程、結城君は彼の全てだった。だから僕は、結城君に会いたいと思ったんだよ。彼が愛したひとを、近くで見ていたかった」
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