優友

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「明日もまた、学校で会おう」 「うん」 「放課後は、また居残りだからな」 「うん」 「それから……」  言葉が続かない。それなのに相楽は、構わず「うん」と返してきた。二人共、こんな望みは叶わないと知っている。明日には、教室に相楽の存在も痕跡も、何もないと判っていた。 「ねぇ鬼防君。結城君に、自分の気持ちを伝えて。ちゃんと言葉にして、伝えてね」  答えずにいると、回された手が、強く服を握り締めた。 「結城君はね、鬼防君にちゃんと伝えてるよ。きっと、何度も何度も。鬼防君もちゃんと言ってね。結城君に、伝わるように」 「……ああ」  仕方なく頷くと、「本当だよ?」と微かに顔を上げて確認してきた。 「結城君が伝えてるその言葉は、結城君にとって特別な言葉だよ。だけど今は、一番信じられない言葉になってる。それでも、とても大切な言葉だから、一生懸命鬼防君に伝えようとしてる」  「ああ」  解ってる、と口先だけで応える。  だけどそれは、彼から言われた言葉なんじゃないのか? だから、あいつにとっては特別な言葉なんだろう?
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