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「神崎さん、お疲れ様でした」
「お疲れ様です、時間を食っちゃいましたね」
スマートフォンの新機種を撮影する為朝から貸スタジオに詰めていたがガラス面に映り込む光の調整に手間取り時計はもう五時をまわっていた、合計8時間もかかった計算になる。
「あのカメラマン拘り抜か過ぎなんじゃないですか?もう何でもいいから早くシャッター押してくれって何度も言いそうになりましたよ」
「有名な大企業から仕事を貰って失敗したくなかったんじゃないですか?」
真っ暗に照明を落としたスタジオからドアをくぐると急激な明暗に悲鳴を上げた瞳孔がその身を縮め目が眩んだ。
「うわ………眩し、疲れましたね」
メーカーから派遣された担当の山添は暗闇に油断して緩めていたネクタイを首元までキュっと締め上げ眉を下げて笑った。
撮影と言っても写真を撮るのは依頼したプロのカメラマンでデザイナーとして指示は出すがあとはひたすら待つだけ……山添も隅っこでずっとスマホを触っていただけだった。
「コーヒー以外の何か冷たいものが飲みたいな……神崎さんもどうですか?奢りますよ」
「じゃあビールを願いします。」
「賛成………」
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