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1 再会
通りたくない道があった
塀にペッタリ背中を付けて道の端をソロソロと通り過ぎようとすると腕を枕にずっとだらしなく眠っていたくせに突然飛び起きて綱いっぱいに身を乗り出して吠えてくる犬がいた。
何の恨みがあるのか1回聞きたいとは思うが、毎回飛び上がって逃げてしまいそのチャンスは訪れなかった。
スイミングの巡回バスに乗るにはその道しかなく、クマ………と胸元に変な札を吊り下げたそいつとのバトルは毎週水曜日と金曜日、中一の夏前まで続いた。
「俺……熊川部長………苦手なんです」
「俺だって苦手だよ、あの人どこで怒り出すか分からないだろ」
「はは……そっくり……」
「え?何が?」
「何でもないです」
一日200万人は流通する巨大なハブ駅に隣接している巨大商業施設は、今日も朝から呼吸する様に大量の客を吸ったり吐いたりしている。
会社内部の販売促進部、宣伝装飾課に勤めて五年、朝から持ち上がったとんでもない騒動にデザイン部として出来る事は「謝る」だけ……
名前からして因縁を感じる相手、一階婦人雑貨の熊川部長は店舗全体の顔とも言える花形部署を統括しているだけあって仕事は出来るが店内で1、2を争うくらい怖い
普段は静かに怖いが怒り出すと噛み付くように畳み掛けられ言い訳もさせてもらえない
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