プロローグ

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プロローグ

ムンと。 地面から立ち昇る目眩がする程の熱気に景色がゆらゆらと曲がって見えた。渇ききった校庭では打ち水が手招きをしている。 それが蜃気楼なのだと後で教えてもらった。 そこにはない水面の上で汗に濡れた額にペッタリ髪を貼り付けて走り回る小さな体が躍動している。 深く沈めた体がクンッと解放されると柔らかい背中がバネのように跳ねて宙を翔けていく、柔らかそうな髪がフワリと浮いた。 地面を蹴る足取りは軽くて……軽くて…… 羽根が生えているのかと目を凝らしてしまう 「お疲れ様でした!」 ワッと騒がしくなった暗い室内で突然現実が戻ってきた 「あれ?……俺……今……」 我に返るとシンと静まり返っていたスタジオが止まっていた時間を取り戻すようにバタバタと一斉に動き出していた。 もしかして……立ったまま眠っていたのか? 5分か1分………もしかしたら5秒くらい?… 意識が飛んで白昼夢の中にいた。 「どうして今頃あんな……昔の事を…」 子供の頃にずっと見つめ続けた眩しい背中はまだこんなにも鮮明で心の中に居座っていたのかと驚いた 懐かしくて………切なくて喉の奥がクッと上がってきて意味もなく空咳をした     
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