崩壊の鍵は足元に

１

「ありがとうございます。彩音ちゃんが……」

バツが悪そうな顔で彩音ちゃんが視線を逸らす。

「スタイルが良い理由が分かりましたよ」

僕が笑いながら言うと彩音ちゃんは教室でも見せるような笑顔で僕いう。

「馬鹿なこと言わないの」

パン。と乾いた音が響いた。彩音ちゃんが目を見開いて僕に倒れかかってくる。胸元には赤い点。そこから血が流れ出ていた。

「彩音ちゃん！」

彩音ちゃんは口をパクパクとさせて何かを言おうとしているが聞き取ることができない。

「油断大敵っていうのはお互い様ですね。詰めが甘いですよ」

サングラスの男が拳銃をナイフが刺さっていない左手で持って立っていた。それよりも彩音ちゃんの血が。がぶがぶと流れ出ていて止まる様子を見せない。傷口を抑えた両手は真っ赤に染まっているのに、次から次えと流れ出てくるほんの小さな傷なのに全く止まってくれない。

重い。意識のない人間というのはこんなに重いのか彩音ちゃんは白目をむいて倒れている。死。頭にそんな考えがよぎる。彩音ちゃんが死ぬ。生暖かい血液が僕の体を濡らす。

「予定が狂いました。とりあえず君を殺すという目的だけは果たしましょう」

サングラスが僕に拳銃を向ける。

死ぬ。人が死ぬ。動けなくなる。存在がなくなる。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

意味も理由も分からずただただ暗い闇のような恐怖。漠然とした不安焦燥。死が僕に向けられている。体を?きむしりたくなるような暗い感情が襲う。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

サングラスの男がびくんと体を震わせて、目を見開く。両手で首を掻きむしる。