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生物の進化とは突然始まるものだ。それは世界中にいる人間の中に現れた突然変異と言ってもいい。進化すると言うことは人間も環境に適応するために変化が必要だったということなのだろう。 2020年。それは突然世界中で同時に現れた。その歳生まれた子供達の中に通常人間の生態では実現できないであろう特殊な能力を持った人間が現れたのだ。 能力は様々だった。手も触れずに物を動かせる者。道具を使わずとも火や水、風を発生させられる者。人の感情が読める者。身体能力が発達している者。あらゆる言語を音として理解し話すことができる者。 それは世界を一変させるような力に思われた。 しかし、実際世界は変わらなかった。結局のところ、特殊な能力は個人の力量を大きく超えることはなかったからだ。 手を触れずに物を持ち上げる事はできても、自分の筋力で持てるものより重いものはモテなかったし、火を起こせてもそれはライターで火をつけるのと変わらなかった。 つまり、者を動かしたければ自分の手で持てばいいだけだし、火を起こしたければライターを使えばいい。能力の中には瞬間移動などもあったが、その移動距離は歩いていける範囲に収まっていたし、瞬間と言っても走るよりも早くは移動できなかった。 能力を使うよりも道具を使ったほうがよっぽど効率が良いと言うわけだ。能力なんて言ってはいるがそれはちょっと足が速い子供や頭の良い子供と大差のない程度のものだった。 だから、能力者が生まれた当初、大騒ぎにはなったがそれは次第に収まっていった。ちょっと便利な能力でしかないものなんてあっという間に飽きられて興味を失われたのだ。 ただ、生物学的には能力者というのは研究対象としては多大な関心を持たれた。 能力が発動している原因がまったく分からなかったからだ。最初は脳が関係しているのかとも思われた。しかし、結論は個々人で違うということだった。火を起こせる人間は体液が可燃性の高い物質であることが分かったし、自分の体温を微妙に調整することでその体液を燃やしている。
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