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放課後、雄二と二人で職員室に行くと彩音ちゃんに社会科準備室の掃除を手伝わされた。部屋の中は資料やプリントでぐちゃぐちゃになっていた。僕と雄二は思わず「汚い」とつぶやいてしまったほどだ。
片付けが終わるまでに1時間以上かかってしまった。最後に彩音ちゃんがジュースを奢ってくれたけれどそれだけじゃ割に合わないと思ったが口にはしなかった。
「あー疲れたなぁ」
雄二が大きく背筋を伸ばしながらぼやく。
「彩音ちゃんって片付けできない人なのな」
僕もぐったりと疲れていた。肩をまわしながら同意する。
「なー。しっかりしてそうなのに。意外だな。でもそこも可愛い」
眉をひそめて呆れた気持ちで雄二を眺める。
「お前、本当に彩音ちゃん好きよな」
「んー。彩音ちゃんっていうかこの世界自体が気に入っているよ俺は」
にこやかに笑いながら言う。
「しかし、彩音ちゃんも俺たちに頼むよりもサイコキネシスを使える奴に頼めばいいのにな」
自分の言った言葉をごまかすように雄二が話題を変える。恥ずかしかったのかもしれない。だからこそ、さっきの言葉の真実味が増していた。
「別に、サイコキネシスで物を運んだからって本人が疲れる度合いは一緒だろ」
「あー。そうか。微妙に役に立たないよなぁ。能力って」
それは同感だった。どうせならもっと役に立つ能力だったらいいのに思わなくもない。僕の能力は感情の同調と呼ばれるものだ。
集団心理とでも言えばわかりやすいだろうか。卒業式なんかで数人が泣き始めると周囲の人間も釣られて泣き始めるような現象。あれを僕は起こしやすくする……らしい。
らいしというのは僕にもはっきりと能力の自覚ができていないからだ。ただ、僕の周囲ではそういうことが起きやすいというだけでコントロールできているわけではない。
もちろん、誰かの感情を操れるとかそんな大それたものじゃない。ただそういう雰囲気ができやすいというだけのさして役に立たない能力だ。
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