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最初は雄二はこの沖ノ島でも最奥にある隔離施設に閉じ込められたらしい。しかし、研究が進むにつれて雄二の能力の危険度は低いと判断されるようになった。 なぜなら、雄二の能力はタイムトラベルであり、発動した瞬間雄二は、過去や未来に移動することができる。ただし、そこま僕たちが住んでいるこの世界とは別の世界。別の時間軸であると言うことが分かったのだ。 つまり、雄二がタイムトラベルをした場合この世界からは雄二がいなくなるという事実だけが残るのだ。雄二が過去にさかのぼって歴史を書き換えたとしてもこの世界には関係がないのだ。そして、一度タイムトラベルをしたら二度とこの世界に戻ってくることはできない。 雄二の能力ではどうあがいてもこの世界に干渉することはできないのだ。そして、僕たち能力者の中でひとつだけ絶対のルールがある。それは同じ能力を持った人間は生まれては来ないと言うことだった。まるで、進化の先を競ているかのようなルールだ。 つまり、この世界に住んでいる人間にとって雄二は脅威になりえないということだ。時間を飛び越えようが何をしようが変えられるのは雄二にとっての世界だけなのだ。それが分かった時点で雄二は解放された。少なくとも隔離施設からは出られるようになったらしい。 「俺なんて最初の親とはもう会えないんだからな」 雄二はすでに何度かのタイムトラベルを繰り返しているらしく。ここは最初に生まれた世界とはすでに別の世界らしい。 「……ごめんなさい」 薫が頭を下げる。顔には申し訳なさそうな表情が浮かんでいた。雄二が慌てて首と手をぶんぶんと振る。 「いいんだよ。俺、この世界の両親や孝也と薫気に入ってるし」 「そう言ってくれると私も嬉し……」 薫が笑顔を浮かべて答えようとした言葉は最後まで発せられることはなかった。突然、薫が地面に倒れこむ。え? 何が。 頭から血。 怪我。やばい。 思考がぐちゃぐちゃになる。何が起こっているか分からないまま首を両手でつかまれた。痛い。息ができない。苦し……。 雄二が何かを叫んでいる。雄二も何かに突き飛ばされたように地面に倒れる。後ろには口元を歪めた男が手に棒状の何かを持って立って。 そこで僕の意識は途切れた。
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