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頭ががんがんと鳴り響いていた。まるで脳みそに手を突っ込まれて無茶苦茶にかき回されているような感覚だった。気持ち悪さと頭痛がずっと続いていた。 徐々に痛みが増してくる。同時に朦朧としていた意識が戻ってくる。目の前に人影があった。僕を覗き込むようにしている。ぼやけていた視界がクリアになってきて人影を視線がとらえる。 サングラスに深くかぶった帽子。顔は見えていたがほとんど人相が隠されている。薄緑の作業着のような服を着た人間が僕の目の前に立っていた。急激に意識が覚醒していく。記憶がよみがえってくる。 僕は殴られて。薫は? 雄二は? 意識が途切れる直前道路に血を流して倒れている二人を思い出して周囲を見回す。二人はすぐに見つかった手足を縛られて床に転がされている。わずかに胸元が動いていることから生きてはいるらしい。雄二の頭には血がこびりついていた。背筋がぞっと寒くなる。 「お目覚めかな?」 サングラスの男が話しかけてくる。僕は見上げるようにして男を見やる。 「自分の状況が分かっているかな?」 妙に丁寧な話し方が気持ち悪かった。自分の置かれた状況。おそらく僕たちは誘拐されたのだろう。こいつらの目的は僕たちの能力。僕たちのような能力を持った人間を国が独占しているのを良く思わない人間がいることは知識としては知っていた。 「僕たちを誘拐したっていうこと……ですか」 吐き捨てるように言いそうになり、慌てて丁寧に言い直す。相手を怒らせてもいい事はないだろう。 「物分かりの良い子供は好きだよ」 サングラスは満足そうにうなずく。周囲の様子を視線だけで窺う。サングラスの他に男が3人同じ部屋にいた。手には機関銃のらしき物を持っている。僕たちを誘拐した目的は間違いなく能力目当てだろう。 そして、この3人の中で人を襲ってまで誘拐する価値がある能力と言えば、雄二のタイムトラベルとしか考えられない。タイムトラベルに実用性がないとは分かっているが、それはこの島の中での事だ。タイムトラベルという名前だけで狙って来てもおかしくはない。 「あなた達は勘違いしていますよ」 なるべく相手の神経を逆なでしないように言葉を慎重に選びながら話す。タイムトラベルに実用性がないということを分からせるしかない。それでこいつらが納得してくれるかは分からないが何もしないよりは可能性は助かる可能性はある
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