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「お前は黙ってこっちの質問にだけ答えればいいんだよ!」 後ろに立っていた男が銃口をこちらに向けながら言う。しかし、サングラスの男がそれを手で制した。 「勘違いとは?」 「雄二のタイムトラベルの能力を狙ってきたんでしょうが。タイムトラベルはそんな自由に歴史を変えられるような便利な能力ではないんです。タイムトラベルできるのは雄二だけであって、残された僕たちの世界には何の影響も与えないんですよ」 僕が真剣な顔で説明すると、サングラスの男はしばらく黙って聞いていたが次第に肩を小さく震えさせた。その震えは次第に大きくなり最後には手でサングラスを覆いながら男は大きく笑い始めた。 「何がおかしいんですか?」 「いや、悪い。悪い。勘違いしているのは君のほうだ」 サングラスの言った意味が分からず首をかしげる。 「私たちの目的はあんな使えないタイムトラベルではないということだよ」 じゃあ、一体どうして僕たちは誘拐されたのか。 「私たちの目的は君だよ」 サングラスが僕を指さす。 「君のは自分の能力をおそらく勘違いしている。君は集団心理を起こしやすい能力とでも思っているのだろう?」 その通りだ。僕が頷こうとした瞬間。パンと軽い音がして、サングラスの後ろに立っていた男が突然横に倒れた。サングラスが懐から拳銃を引き抜いて振り返る。 部屋の入口に彩音ちゃんが立っていた。今まで見た事の無いような真剣な顔。右手には拳銃が握られていた。彩音ちゃんが走る。あっという間に男の一人に肉薄すると腕を蹴り上げて機関銃を蹴り飛ばす。振り向きざまに長い足を振り上げて男のこめかみを蹴りぬいていた。 「この野郎!」 残りの一人が銃口を向けた時には彩音ちゃんは床に落ちていた機関銃を拾い上げて引き金を引いていた。男が銃弾を受けて床に倒れる。 「そこまでだ」 サングラスの男が僕に銃口を頭に突き付ける。 「怖いねぇ。生徒を助けに来た先生っていう……」 サングラスの言葉は最後まで紡がれなかった。彩音ちゃんが無言で放ったナイフが拳銃を持った右腕に突き刺さっていた。痛みにうめいたサングラスが蹲った時には彩音ちゃんはサングラスの目の前に立っていて靴の先端がサングラスを蹴りぬいていた。男が地面に倒れる。 「大丈夫だった?」 彩音ちゃんが僕の目の前に立っていつもの優しい顔で話しかけてくる。
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