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夜空をみて思い出した小学生の頃の話。
父親と夜の散歩に出掛ける度に夜の星に向かって大きく息を吸って言葉をぶつけた。叫ぶのは僕の家から少し遠い公園の滑り台の上。
「どうか、あいつがいる赤組が運動会で負けますように!!」
「どうか、あいつが絵のコンクールで入賞しませんように!!」
「どうか、バレンタインでチョコをあいつよりたくさんもらえますように!!」
まあ、数えきれないほど届くはずない星に叫んだ。父親には最初は笑っていたものの、ただの僻みだろ。とだんだん呆れられていた。
僕が星に願うことは、全て叶わない。運動会は赤組に逆転勝ちされるし、絵のコンクールでは最優秀賞とるし、バレンタインでは抱えきれないほどチョコをもらっていた。
今思うと懐かしくて恥ずかしい。でも、たまにはちょっと子どもにでも戻るかとその公園の滑り台の上にかけ上がる。
「どうか、明日あいつが試合で負けますように!!」
夜空に届けってな。
「あいつって俺だろ?それ、ふつう本人がいる前で言うか。小学生の頃もお前そんなんばっかだし、俺の家そこだから聞こえんだよ。」
滑り台の下で呆れているのは、小学生から僕が負けてばかりいるあいつ。公園の隣があいつの家だと知ってからは言わなくなった、最低な願い事。
「だから、言ってやったんだよ。」
「意味わかんないわ。」
「俺の願いは叶わないからな!!」
胸を張って言い放つと、そこは胸を張るとこじゃねえ。って笑ってた。
それは夜空と、そこで笑ってる奴に向けた俺なりの皮肉れた頑張れ。
『どうか、明日あいつが試合で勝ちますように。』
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