第1章 中目黒バックサイド・ブルース

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やだ。やだ。やだ。やだ。 あたしは心の中で何度も繰り返す。 なにがいや?なにもかもだってば。 昨夜知り合った男の子からのLINEがしつこすぎる件。 その男の子と趣味が合わなさすぎる件。 なのに誘われてホテルに行っちゃった件。 (これはあたしが悪いかも) 物欲と食欲と性欲には逆らえない。 別に自分がJKブランドで通用するうちに好きなことをやっちゃおう、とか そこまで考えているわけではないけれど 楽しければまっいっかと割とシンプルに割り切ってるっつーのが 実情だったりする。 でも昨日の男の子はまじ最悪だった。 駄作といわれる映画「3月のライオン」で感動したってとことか 好きな音楽はEXILEの…なんか三代目? もうこの時点であたしとは趣味が合わない。 なのにホテル行っちゃったのは…まあ嫌いじゃないもんね、セックス。 一昨年から通い始めた高校であたしは一応芸能コースを選択している。 じゃあ、芸能人かっていえば全然そうじゃなくて。 まわりは皆事務所に所属している芸能人だらけなんだけど、 あたしといえば最初に所属した事務所が潰れちゃったり、 スカウトはされるけどほとんどがAV系だったりとろくなもんじゃないわけで。 まわりのともだちは「だいじょうぶだよ!かわいいしさ」なんてなぐさめてくれるけど 現実問題、こうもAV系からのスカウトばっかだと正直きつい。 そんなに軽そうな子にあたしは見えてるんだろうか。 いちおう清楚なイメージで…なんてもうつぶれちゃった事務所に所属していた頃は かなり猫をかぶっていた。いやかぶらされていた。 あたしもそーゆーのは嫌いじゃないから最初は平気だったんだけど 担当マネージャーがやたらマッチョできもかったりしたことがやけに腹立たしくて わざと打ち合わせに遅刻したりしてた。ああ子供だな、あたし。 もう1週間学校には行ってない。 そりゃそうだよ。まわりは皆芸能人で浪人中なのはあたしだけ。 同情も最初だけ。浪人中も半年続けば一般人とおんなじ。 もう芸能の仕事もどうでもよくなってるし。 実は今日面接がある。 夕方17時に中目黒。これ落ちちゃったら…もう芸能界は諦めよう…とか そういう話じゃなくって単なるバイトの面接。 東横線に揺られてあたしは中目黒へ向かう。 いろんなことを後悔しながら…ってそんなヘヴィな心境でもないけどな。
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