第1章 中目黒バックサイド・ブルース

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そもそもあたしは芸能人になりたいのか?そのへんはよくわかんない。 なんとなく小さい頃劇団に入って、なんとなくテレビのオーデション受けさせられて なんとなくレギュラー決まったり。そんな風にしてここまできた。 なんとなく、なんとなく。サニーデイ・サービスが昔歌ってたっけ。あれはなんて曲だっけ。 「宣材撮らなきゃね」 そう言われてスタジオに連れていかれて写真を撮った。いや、撮られた。 あれはたしか小学六年生のときだっけか。なんだかよくわかんないけど 延々とソフトクリームを舐めさせられた。そして衣装はタンクトップとチューブトップ。 短パンのデニム。今ならわかる。この「自称」宣材がどこにバラまかれて、どんな用途なのか。でもそのときのあたしにはまったく理解できなかったので一生懸命ソフトクリームを舐めて、言われるがままにタンクトップやチューブトップを着て、自分でもおかしいなと思いながら(着衣のまま)シャワーシーンを撮影した。アホか。 事務所の面談まであと10分。iphoneのヘッドフォンジャックにお気に入りの赤いヘッドフォンを差し込みヴォリュームをあげる。プレイリストは銀杏BOYZ。峯田の叫びはいつだって優しい。中目黒駅前の横断歩道を渡り、目的地のビルへとあたしは足を急がせた。
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