返歌

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 アイ。  元気そうで何よりだ。  残念ながら、俺も何とか生きてるぞ。  こっちはカラッと乾燥してなかなかに快適だぞ。  ただ、香辛料だけはどうにも慣れない。  ソイ・ソースが欲しいところだ。  アイ、  砂漠の夜は美しいぞ。  星がびっくりするほど綺麗なんだ。無駄な明かりが全くないから、まるで宝石箱をひっくり返したみたいに、でっかい星が沢山キラキラと輝いて…  満天の星空ってのは、きっとこういうのを言うんだなぁ。  ただし煙幕に覆われていない日に限るが。  1年……もうそんなに経つか。  あの夜のことは俺もはっきり覚えてる。  春だっていうのに、雨上がりの夜空はイヤに澄んで…  お前はガキみたく喋いでた。  ………  サヨナラも言わず、黙って姿を消したこと、お前は相当怒ったろうな。  いつもみたいに眉を吊り上げて。  いや。  違う、か。  お前は本当に哀しい時、  ぎゅっと口を惹き結んで、泣くのをじっと耐えるんだ。    俺達が初めて会った日もそうだった。
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