見えない鎖

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「昨日ニュース見た?」 同僚の男が話しかける。 紙コップで出てくるコーヒーを片手に同僚が近づいてきた。 最近は変な事件が多い。 誰もが思っている事だ。だが、全体の犯罪件数は戦後から減少傾向にあり、決して治安が悪くなっているわけではない。 だが、不穏で、不安で、つかみきれないこの感覚はなんだろうか? 池上彰が以前、テレビで言っていたのを思い出す。 「私がNHKにいた頃は、地方の殺人事件は全国区ではやりませんでした」 現在は、地方で発生する殺人事件が全国ニュースで報じられているようだ。 テレビの影響なのか?その理由だけで納得出来ない自分がいた。 同僚の男が言っていたニュースは、男女のカップルが無理心中した件だった。 そんなに珍しいか? 「そりゃ珍しいだろう。しかもこの辺りで起きた事件だし。俺の友達の友達らしいんだよ」 興奮して男は俺に話かけた。 「しかもさ、ちゃんと遺書もあったらしんだよ。テレビでやってないけど」 何が書いてあったの? 「ただ、なんとなく、だってさ」 全く面識のない人間で、何歳なのか可愛いのか、格好良いのか、それすらも興味がないので俺は適当に相槌をうって話を流した。 手元のスマホ画面が光出す。
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