『白い魚』

1/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ

『白い魚』

 「これをあげる」  言われて左胸のあたりに押しつけられたのは 白い魚のような物体だった  ヌメリ感のある表面 濡れたような透明感のあるその物体に  僕はびっくりして 思わず後ずさった  大きさは手のひらぐらい  ペタリと服の上から貼り付いて 身動きしても微動だにしない  「うぁ! うわ、うわ! 」  慌てて服を引っ張っても 魚はとれない  巨大なナメクジみたい  触りたくなかったので屈んで 服を摘まみ ヒヤリとしたその感覚を皮膚から遠ざけようとする  「なにこれ、気持ち悪いよ! 」  涙目になりながら 彼女に上目で抗議する  なんなんだこれ 嫌がらせ?  こんなものいらない
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!