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その日の夜は、予報通りの曇り空だった。星はおろか月さえも見えずに春樹をガッカリさせていた。
ベランダから見える山を眺めると、山の上には雲が掛かっていなかった。きっとあそこからは流星群が見えるのだろう。
もしも願いごとをするとしたら・・・春樹が生まれる前に戻りたい、かな。
両親が私だけの両親だったあの頃に。
暫くベランダで空を眺めていたら、急に春樹の泣き声が大きく響いた。
少しすると父が私の部屋に来て「救急車を呼んだから、千秋は家に居なさい」と言った。
苦しそうに呼吸をしている春樹を抱えて、父と母が玄関にいたから見送りに出ると、「お姉ちゃん・・・」苦しそうにしながら、春樹が何かを私に訴えようとしている。
父も母もそれを制すけど、春樹は私の方へ手を伸ばして何かを言おうとする。
私が近づこうとすると、母が「今は向こうへ行きなさい!」と強く言ったから、私は逃げるように自分の部屋に駆け込んだ。
春樹が泣き声を上げようとして、また発作が酷くなって呼吸困難に陥っていったようだった。
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