35人が本棚に入れています
本棚に追加
「私のせいかもしれない・・・」
救急車のサイレンの音を聞きながら、思わずそう呟いた。
流れ星は見えていなかったけど、この曇り空の向こうのどこかで、星たちが“春樹が生まれる前に戻りたい”という私の願いを聞いてしまったのかもしれない・・・。
もしもそうだったら・・・春樹が流れ星に連れて行かれてしまう。
私は遠くの山に目をやった。
あそこへ行けば、流星群を見られるかもしれない。そして、たくさんの流星群ならさっきの私の願いを取り消してくれるのかもしれない・・・。
そう思い立つと、私は貯金箱を手に取った。中を確認すると、山までの電車賃くらいは余裕にあるだろうと思われた。
玄関から飛び出してエレベーターの方へ向かうと、後ろから俊太の声がした。
「どこ行くんだよ。今、千秋を呼びに行くところだったんだ」
エレベーターに乗る前に腕を掴まれて阻止された。
「春樹が救急車で病院に行ったんだろ?おばさんから家に連絡が来たんだ。千秋をお願いって」
「ごめん、今日は行かない。あたし、とんでもないお願いをしちゃったの。取り消しに行かなきゃ!」
エレベーターが来たから乗ろうとすると、俊太に引き留められる。
「どこに行くんだよ」
「流星群が見えるところ」
「俺も行く!ちょっと支度してくるから待ってろ!」
家に戻る俊太の後姿を見て、私は少しだけ心強いと思った。
最初のコメントを投稿しよう!