35人が本棚に入れています
本棚に追加
ふいに私の目から涙がこぼれて、俊太が驚いたような焦ったような顔をした。
「あたし、もしも流星群にお願いするなら、春樹が生まれる前に戻りたいって思った。そしたら、春樹が発作を起こして・・・」
泣きながらしゃがみ込むと、俊太の手が私の頭を撫でた。そのぎこちなさから困っているのが伝わる。
「だけどね、春樹はお父さんとお母さんに必要だから、いなくなったらいけないの。連れて行くならあたしを連れて行ってもらおう、って思ってここに来たの」
私は涙を拭いて、枝垂桜のように流れ落ちていく星たちに向かって心の中で願った。
春樹を連れて行かないで、私を連れて行って、と。
「違う願いごとをしようよ」
ふいに俊太に腕を掴まれて我に返った。
「せっかく一緒に来たのに、千秋が流れ星に連れていかれるなんて嫌だぜ、俺」
無邪気な言い方だけど、その瞳は真剣だった。
確かに、こんなところに置いて行かれるのは嫌だろう・・・。
「ただ春樹の無事を願おうよ。2人で願えばきっと叶う」
私は大きく頷くと、空を見上げて目を瞑った。
それでも心の中では、春樹を連れて行くなら私を連れて行って、と繰り返していた。
最初のコメントを投稿しよう!