学園怪異ミステリーの場合

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       ☆  ……とある晴れた日の午後の事。  中部地方の内陸部に位置する県立高校、通称『南校』の1室では、現在、とある部活動メンバーが秘密裏に活動していた。  本棟、中棟、北棟と、大まかに3つの校舎からなる高校の、その北棟4階の端の部屋。  『文芸部』とプリントされたネームプレートが掛かった扉の、その奥では、今……。  カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……。  ……向かい合わせに設置された2つの机に、それぞれ男女が腰掛け、机の上のデスクトップPCを見つめながら、絶え間なくキーボードを叩き続けていた。  ……現在、季節は5月。  梅雨入り前特有の蒸し暑さに包まれ、それぞれカッターシャツとブラウスを汗で肌に貼り付かせながら、彼らが熱心に行っているのは、実に9月に行われる文化祭で発表するための作品作りであった。  「……誰もいないはずの学校に響く気味の悪い笑い声……校庭に浮かび上がる巨大な血のメッセージ……逢魔が時……」  文字を打ち込む側からブツブツと呟いている男子は、この『文芸部』の部長。  そして、その一方、  「……………………」  ひたすら無言でキーを叩き続けるのは、整った顔立ちのポニテの少女、通称『文ちゃん』だった。
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