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「今日は新作のサクラベリーにしてみようかな…」
星空が見える中アイスを堪能するために、椅子も深く腰が収まるように買い替えた自分は変態だと言われそうなので誰にも言わず心の奥にしまっている。
だたロマンチックな場面には『男』というキーワードがもれなくついて来る為、いつも彼の事を思い出してはヘコむというサイクルを繰り返していた。
「ん?なんだこれ…」
蓋を外すと密閉シートが張り付いているのもお高めアイスの醍醐味だ。
裏にアイスがつかないし、溶けてしまっても漏れ出す心配もなくフォックスベリーのロゴがこれでもかという程プリントされていて見た目も可愛い。
いつも蓋の裏は基本白地なのに、ゴールドの文字で『lucky・chance!』と書かれていたが今までこんなシステム全くなかったので読んで見る事にした。
内容は『いつもフォックスベリーを愛食頂き有り難うございます』から始まり、私は歴が長い分VIP気分で読み進めていた。
映画やテレビ、リラックスした時間帯に幸せを感じて頂けるスイーツを目標に掲げ30年。
感謝の気持ちを込めてプレゼントをご用意しました。
『A自分が見たいコース』と『B自分が行ってみたいコース』に分かれていて、蓋に希望を書いて一週間吊るしてと指示されていた。
私が気になってるのは自然消滅した彼の事なのでAと書いて小さなベランダのプランターに吊り下げておいた。
「普通アイスの詰め合わせとかじゃないの…?」
若干疑問に思ったが長年食べてる信頼も手伝い、深く考えず言われた通りにした。
翌週は結構ハードで欠勤者が居たので代わりに出勤したり、急な残業もあり帰ってからも風呂からすぐ睡眠のコースの繰り返しだった。
週末になり待ち望んだ『お風呂上がりアイス』をご褒美に大好きなリラックス時間が始まる。
窓を開けると空には一定間隔で星が煌めいていて、冷凍庫からチョコチップナッツを選び椅子に腰をかけた。
ベランダのプランターに吊るしておいた当たり蓋を見てみると、あの時と文字が変わっていることに驚く。
『Congratulation!Aコースの貴女は二時間ドラマ仕立てで楽しんで下さい。勿論アイスの準備もお忘れなく…チャンネルはそのままで』
テレビなんてつけてないが書いてある通りに従い、アイスとその後に飲むコーヒーを準備すると椅子に戻り画面をジッと見つめていた。
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