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「お前の身体はお前のものだよ。やりたければやる、止めたくなったら止める。それ以外何がある?過去のことまで言われたらどうにもできないじゃないか。じゃあ止めろ、そんなつまんないこと言い出しそうな男は。夜里には相応しくない」
また急に怒り出した。すかさず突っ込んでしまう。
「何でわたしの方が選ぶみたいなことになってんですか。ずいぶん上から目線じゃない、そんなの?」
加賀谷さんは案外真面目な眼差しをわたしに向けた。
「お前の方が選ぶからだよ。一緒になりたい相手はお前が自分で選ぶんだ。夜里の全部を受け入れてちゃんとずっと大切にしてくれる相手を見つけるんだぞ。過去のことなんかぐちぐち言うような奴は最初から論外。相手のことを本気で好きになればその人だけで足りるんだ。それで充分じゃないか?」
だから、加賀谷さんはそうかも…、しれないけど。わたしは白々しく尋ねた。
「じゃあ、今ラウンジでやりまくってる人たちは?結婚してお子さんのいる方もいっぱいいるよ。女の子たちだって彼氏に内緒でこんなの続けてる子もいるらしいし…。その人たちはどうなの?自分だけのための相手がいても満足できない人たちは?」
「うぅ」
そこを突かれると弱る、とでも言うような曖昧な声を出して急にパソコンに真剣に向き合った。商売の内容が内容なだけに無碍に否定もできまい。わたしは何故か得意げになった。
「ね?だから、加賀谷さんみたいな人は例外なんですよ。普通はそうすっぱり割り切れないんじゃないですか。みんなみっともなく過去に嫉妬して、誰かと相思相愛になってもそれで飽き足らずに陰でこそこそ何かしたりしてるんですよ。そんなもんじゃないの、男女関係なんか?」
「よしわかった。じゃあこうしよう」
不意に遮るようにきっぱり断言する。
「お前は俺みたいな奴を選べ、夜里。お前がどんなことをしててもお前自身を見て、価値を見誤らない。過去は問わない。好きになったら女はお前だけで充分、他は要らない。そういう男しか認めないからな。面談するから連れてこい、好きになった相手が出来たら」
わたしはのけぞった。…いえいえそんな。
「非現実的なことを。…そんな人、絶対いないよ。結局ずっと一人でいろって言ってるのと同じことだと思うけど」
まあそれでも構わないんだけど、わたしは。最初から誰かと付き合うとか結婚するとかは想定してないし。
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