第8章 男たちの大好きな玩具

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あーあ、とか残念、とかぶつぶつ言いながら帰り支度を始める彼らに向かって高城くんは氷のような声で付け足した。 「今日のプレイの中で規約上、重大な違反行為と見られるものがいくつか見受けられました。その旨上に報告を致しましたので、追って皆様には連絡がいくものと思われます。クラブでのプレイについては処分が通達されるまでしばらくの間お控え願います」 高城くんの厳しい言葉が大して堪えた様子もなく、連中はまたね、夜ちゃんとか、滅茶滅茶よかったよ、と口々に声をかけ、揶揄うようにさっと身体を弄ったり唇を吸ったりした後やっと去っていった。何の抵抗もできずぐったり横たわったままのわたしのそばに彼が乗り込んできて、静かな声をかけた。 「…夜さん」 そうか、あまり長いこと車を停めておけないって言ってたっけ。起き上がって服を着ないと。頭ではそう考えるけど身体が上手く動かない。何とか腕で支えて上体を起こそう、ともがき始めた。…不意に、そこで。 彼がわたしを助け起こそうとでもするように近づいて両腕を差し伸べた。その手がぐい、と自分の方に引き寄せて、次の瞬間わたしは高城くんの腕の中にいた。ぎゅ、ときつく抱きしめられる。 わたしは強張っていた身体の緊張をそっと解いた。すごく、温かい。その体温がわたしを慰めて、優しく全て受け入れて解してくれるみたい…。 目を閉じて彼の胸に重みを預ける。更にその腕に力が込められた気がした。少し震えて聴こえるその低い声が、胸から直接響いてきた。 「夜さん、すみません。…酷い目に遭わせて。なかなか助けてあげられなくて」 わたしは小さく首を振った。 「高城くんは悪くないよ。わたしを守ってくれようと頑張ってくれてたのはちゃんとわかってるし。…あんな、三人に変な風に団結して悪乗りされたら。仕切る方だって大変だよね。でも、本当に酷いことはされずに済んだし、おかげで。助けてもらったと思ってるよ。ありがとう」 「あれは。…悪乗りってレベルじゃないので」 彼は苦々しく吐き捨て、わたしを優しく胸から離して服をかき集めた。そこで初めてまったく服を身につけずに彼にしがみついてたことに意識が向かい、耳まで赤くなる。慌てて自分のバッグを覚束ない手つきで引き寄せ、何とか下着を取り出す。高城くんは車内に置いてあったウエットティッシュの箱を持ってきた。
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