第8章 男たちの大好きな玩具

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一枚ずつ手に取り、しばし自分の手のひらの熱で温めてから丁寧にわたしの身体を隅々まで拭ってくれた。ティッシュの冷たさを感じないように配慮してくれてるんだ。そんな様子を見ていたら恥ずかしいとか考える気がしなくなってきた。むしろ、子どもか赤ちゃんが優しくケアしてもらっているみたいだ。 身体が綺麗になると、服を身につけるのを手伝ってくれた。下着もしっかりつけてようやく人心地ついた気になる。まぁ、下着以外の服(特にスカート)に問題がないことはないけど。贅沢は言ってられない。 高城くんが渡してくれたペットボトルの水を飲んでいると、彼の携帯が盛んに鳴り出した。ちょっと眉を顰め、ああ、あの人だ、と小さく呟く。 「あの人?」 「マネージャーです。…帰りの車内での様子は、音声で通信飛ばしてました。重大な規約違反があった証拠にもなるし。昼に前半の様子を報告したらすごく心配してたので…。さっきからどうなった、ってLINEが滅茶滅茶入ってて」 加賀谷さんか。そりゃ心配するよな。奴らから解放されて落ち着いた途端急に呑気な気持ちになり、ペットボトルの飲み口を咥えながら彼が通話するのを見守る。 「はい。…はい。男性は全員、帰しました。追って通達する、とは。…はい。夜さんは見たところ、怪我とか身体の不調は。…病院?どうでしょう…」 スマホをやや顔から遠ざけ、わたしの方を見遣る。 「お医者さん行った方がいいですか、夜さん?念のため見てもらいますか。…あ、でも日曜だから。救急外来になっちゃうか…」 「いえいえ、全然。もう平気です、何処も何とも」 わたしは慌てて答えた。冗談じゃないよ。 彼はその答えを聞いて再びスマホに話しかける。しばしやり取りがあって、不意にそれをわたしに突きつけてきた。 「すみません。マネージャーが、夜さんに代わってくれって」 わたしはもの憂くそれを受け取った。何となくどんな会話が交わされるか想像はつく。 『夜里!…本当ごめん。俺が週末出張なんか頼んだから。…お前のこと酷い目に』 想像以上に余裕がない。そうか、あれをリアルタイムで全部聞かされてたら。気が気じゃなかったかもしれないな。 「加賀谷さんが悪い訳じゃ」 彼は真剣な声で言い募った。 『でも、安全な無難な奴を選んだつもりで見誤った訳だから…。連中は元々知り合いらしいんだけど、クラブに来る時は今までいつもばらばらだったんだ。
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