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固まるとあんな感じになるってちゃんと予測できなかった。外の空気の影響もあるだろうけど、多分ああいうのが奴らの本質なんだと思う。運悪くお前相手の時に初めて露見した感じなんだろうけど…。本当、申し訳ない。あいつらは今後クラブに出禁になるし、それだけで済ますつもりもない。実生活でもそれなりの代償は払ってもらうからな。思い知らせてやらないと、あんなのは』
わたしはちょっとのけぞった。
「実生活でって。そんなのできるの?っていうか、このクラブの会員さんは皆、社会で地位も高くて力もあるんでしょう。そんな簡単に処分したり制裁したりできるの?」
加賀谷さんの声がことも無げにあっさり片付ける。
『そりゃ、勿論だよ。だってこんなクラブをやってく上で、コントロールの効かない人間を相手にしてたら滅茶苦茶になっちゃう。最初から地位も名声も、ここのオーナーより上層の奴は会員に含んでない。いざという時完全に首根っこを押さえられる、って確信の持てる人間しかここには所属してないから。じゃなきゃこんなのとてもやってられないよ。仕事の上でダメージを与えることもできるし、私的な生活の中で弱点を突くこともできる。会員の身辺全部徹底的に洗ってあるんだから、最初から』
マジか。
「…怖」
『じゃなきゃこんな裏の仕事成立しないよ。制御できない連中を相手にしてたら女の子たちを守れないし。ちょっとでも問題のある会員は即追放。それで何かごね出したら何らかの措置を講じる。そう決まってるんだ。だからお前は二度とあいつらの顔を拝む必要はないよ。そんなことより、本当に身体は大丈夫なのか。ここに来て少し休むか?迎えに行こうか』
真面目に心配の溢れる声になった。わたしは電話に向かって尋ねる。
「ここって、今何処にいるんですか」
まさか加賀谷さんち?
『クラブの事務所。お前のこともあるし、家にいても落ち着かないから、ずっとここで仕事しながら詰めてた。そばで横になってしばらく休んでいくか。終わったらちゃんと家まで送るし、勿論』
一瞬考え込む。こんな気持ちの時に加賀谷さんの顔を見られたらほっとするだろう。それは確かなんだけど。
クラブまで赴いてそこで心身を休めても、そのあと結局また家に帰らなきゃならない。いくら加賀谷さんが送ってくれるとは言っても一度横になった後にまた起き上がって帰宅する気力を振り絞るのが辛そうだ。
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