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このしどろもどろをせめて照れだと解釈して欲しい。
ややあって彼が強張った肩の力を抜くようにふぅー、とため息をついた。
「あーあ。…何か、始まる前に終わっちゃった感じかなぁ。参戦した気が全然しない…」
わたしは情けない気持ちで呟いた。
「ごめんね」
「そんな、矢嶋さんは悪くないよ。俺が勝手に盛り上がって勝手に失恋しただけだから。…それに、今思い返しても最初から微妙に歯切れ悪かった。心の中でその人のこと、少し引っかかってたの?」
早くこの嘘大会が終わって欲しい一心で神妙に頷く。
「誰もいないの?って言われたら。…まぁ、その時は本当に何でもないんだし、疚しいこともなかった筈なんだけど。でも、頭の端をよぎらないこともなくて。…今思うと、やっぱり。…気にはなってた、かなと」
テーブルの上で組んだ指先を強張らせる。
「もしかして。…ちゃんと付き合い始めたの?最近になって」
うう、もう、それで行こう。
「んと、…あの。実は。…この度、そういう。…ことに」
ちょっとの間沈黙が続いた。重い。
「…そっか」
彼はふぅ、と短く息をついた。
「残念。…せめて、ちょっとは駄目元でチャレンジだけでもしたかったけど。そういうことならもう、迷惑にしかならないのかな。…諦めるしかないかぁ…」
「筧くんならわたしなんかより全然いい子いっぱいいるよ。むしろわたしなんかじゃ釣り合わないと思うもん、本当に」
心の底から熱心に言うと、彼はちょっと何とも言えない目を向けてきた。
「そういうとこ。…確かに、言われてみれば何処かお嬢様っぽいんだよな。すれてないっていうか。世間慣れしてないっていうか。浮世離れしてる感じ、思えばそうかぁ…、って」
「単にコミュ障で人とずれてるだけです。そんないいものじゃないんだって。…それに、うちなんか別に普通だから。えーと、彼の家は、そのぅ、それなりだけど。わたしはそんな、いい育ちとかって訳じゃないです。そこは本当に」
この上お嬢様とかいう肩書きが出回るのは耐えられない。必死に弁解する。確か高城くんちは会社をやってる設定だったけどこっちはそうじゃないよな。うちは普通、で押し切ろう。
「親同士が友達で。子どもの頃から向こうのご両親にも可愛がって頂いたんだけど、うちは普通の家庭だよ。お嬢様とか言わないでね、他の人に。嘘になっちゃうから」
他にも色々と嘘満載だけど。
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