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これ以上上乗せする必要はない。てかこの話、何とかここまでで終わりにしたい。
わたしの必死の形相に筧くんはふと表情を和らげた。いつもの温かい目を向けて柔らかい笑みを浮かべる。
「大丈夫、そんな個人情報他の連中に言いふらしたりしないよ。あくまで普通の人としてここで働きたいんだもんね。そういうとこもいいと思う、矢嶋さんらしくて」
自分らしさって何なのかわからなくてふと首を傾げてしまうけど。その様子を見てまた微笑む彼との間に頼んだメニューが運ばれてきた。わたしにカトラリーを要領よく手渡しながら励ますように言う。
「時間なくなっちゃうね。とにかく食べようか。これはこれとして、今後ともよろしくね。…同期の友達として」
わたしは感謝しつつ深く頷いた。
「うん。…ありがとう、筧くん。こちらこそ。本当にいろいろごめんね、お世話になるばっかりで」
「何にもしてないよ、本当のところ」
苦笑する彼に内心でそっと手を合わせる。
でもまぁ、何とかこれで収まったかな。やれやれ、どうなることかと思ったけど。結果、高城くんの護衛が思わぬところで役に立ってくれた訳だ。クラブに足向けて寝られない(彼の住んでるところは知らないから)。
わたしは心の底から安堵して、気を取り直しスプーンを持ち替え目の前のマカロニグラタンに手をつけ始めた。
「…はぁ…」
微妙な声色のため息が喉の奥から漏れる。背もたれにぴったり身を寄せて全身をまだ微かに息づかせているわたしの方を振り向いて、加賀谷さんはあからさまに顔を顰めた。
「ヘンな声出すな。こっちは作業中だぞ」
「すいません」
それはわかってるんだけど。ついさっきまで五、六人の男たちに一遍に群がられて何が何だかわからないくらい全身弄られてたんだもん。何度も激しく奥を代わるがわる突かれてびくびくしてるわたしに、例によって黒服の手により救済措置が為されてここまでそのまま運ばれてきた。てか、途中でその黒服にも少しだけ悪戯はされたけど。最後まではされなかった。
自分のわななきを抑え込むように身体の位置を変えてみる。もしかしてそれが却って駄目だったのかも。中途半端に弄ばれるよりいっそ最後まで思い切りされて、いかされて終わったらもう少しすっきりした気分でここで静かに休めたんだろうけどね…。
まあ、そこは仕方ない。わたしは目を閉じて全然違うことを思い浮かべようと努力する。
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