最終章『炎帝』

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「生徒会長である君が居てこの有り様とはね。少々残念だよ。」 「これは、その、あああの学園長違うんです。これは私の力が及ばず何というか……」 「全部見てたよ。君の失態はね。話は後で聞くから、とりあえず大人しく学園長室まで来てもらえるね?」 「……………はい」  頭に血が上っていた真っ赤になっていたアーチェの顔は学園長が来ると同時に青くなり、最後には消沈しきった様子で肩を落としてトボトボと連れられていった。  仮にも生徒を預かる学園の長たる人間が、犯人とはいえ怪我人の治療より先に説教に移る辺り相当キレていることは間違いないだろう。  イカれた後輩に巻き込まれて今まで良い子を演じてきた化けの皮が剥がされた挙げ句、醜態を見せ付けて主犯グループの一人となってしまった彼女も不憫な話である。  アーチェ達を見送ると、ローガンはこの事件の原因である二人に改めて向き直る。 「事の顛末はランドルフ一年生から聞いている。全くよくもこれだけのことをやらかしたものだ」 「照れるぜ」 「褒めていない。」  サングラス越しの眼光が一層鋭くなる。視線に物理的力があるのであればバッサリいけそうな鋭さだ。  セリカはさりげなく逃げ出そうとしていたが、八角金盤(やつで)のように大きな手が頭を鷲掴みにすると万力のような力で締め上げられる。 「この件の後始末にお前達への処分諸々、言い渡すことはいくらでもある。二人とも生徒指導室まで来い。治療はそこで受けさせてやる」 「おう、ちょっと待つてな。すぐにコイツと決着つけっからよ」 「それを止めろと言っているんだが?」  拳を合わせて意気込むアホの頭を掴んで止める。リザは信じられないといった顔で見上げ、 「え!? ダメなのか!?」 「当たり前だろう。」 「だってオレだけまだ派手な大技使ってねぇ!! ズルい!!」 「そういう問題じゃない!!!」  ガツン!! と鉄の塊でぶん殴ったような鈍い音が響き渡る。  こうして学園どころか周辺の街一帯まで巻き込んだ三つ巴の大喧嘩は収束を迎えた。この一件は瞬く間に王国中へ広がり、三人の悪名は王国全土に知れ渡ることになったのであった。
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