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本日は快晴なり。
整然とした石畳で舗装された街道に、活気溢れる商店が建ち並ぶ。祭りでも催しているかのような喧騒が包み、道を行く人々に威勢の良い売り子の声が飛び交う。
ここエターニア王国の王都は周辺諸国でも屈指の人口と経済レベル、そして穏やかな気候と治安を兼ね備えた大変住み良い環境に恵まれた街である。
しかし、どんな光輝く街にも薄暗い部分はついて回るもの。それはこの街をしても例外ではなく、この日も往来から外れた裏路地には不穏な人影があった。
いかにも、というような出で立ちの男が四人。逃げ道を塞ぐ形で一人の少女を取り囲んでいた。
「よォお嬢ちゃん。お上りさんかい?いくら昼間だからって無用心なのはいけねぇなぁ。」
「ま、これも社会勉強ってやつ?お兄さん達が都会の怖さを優し~く教えてあげるからね~♪」
男達の間に一斉に笑いが起こる。路地の壁に反響して耳をつんざくような音量だが、表の街道までは喧騒に掻き消されて届かない。
ずっと俯いていた少女が顔を上げた。
赤い前髪に隠れていたその顔は端正なモノだった。それは男たちが予想していたものよりも遥かに。
濡れたルビーを嵌め込んだような瞳は自身の髪にも負けない深紅に煌めいており、やや吊り目なのは気の強さからか。挑戦的なその眼は彼女の魅力を一層引き立てていた。
染みの一つもない滑らかな肌に、黄金比のバランスを備えた鼻筋。長いまつ毛は貴族の令嬢を思わせるような気品を漂わせてさえいた。
ひゅう、と男の一人が口笛を鳴らし、感嘆したような間の抜けた声がどこからか漏れるのが聞こえる。
そしてそれらは一様に下卑た欲望に満ちた笑いに変わる。これから起こるであろうイベントに期待を寄せて。
ーーーー誰も気付くことはなかった。その渦中にある少女もまた、密かに口角を上げて笑みを浮かべていたことに。
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