最終章『炎帝』

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 リザとセリカの闘いは概ねセリカの優勢であった。単に激昂し攻め立てるセリカに対してリザは様子見しかしていなかったから、という理由もあっただろうが、それは思いもよらぬ方向へ転がった。  アーチェ=スカイリバーの乱入である。 彼女は周囲に甚大な被害を撒き散らしながら闘う二人の間へ割って入り……というか二人を纏めて文字通り水に流したのだ。  生徒会長が調停しに来た! 助かった! と思ったのも束の間、普段の彼女からは想像もできない暴言を吐きながら辺りを巻き込んで蹂躙の宴に乱入したあたりで彼らの顔色も一変。蜘蛛の子を散らすように三々五々に逃げ出していく。  アーチェの制圧力は圧倒的だった。リザ達よりも三年分の長がある彼女の実力は凄まじく、横槍を入れられた瞬間から彼女らは防戦一方であった。  鉄砲水を引き起こしたような洪水の中、アーチェの魔力が産み出す水の鞭か或いは水の龍がのたうつ様を眼下に置きながら、アーチェは水の球体に収まりながら宙へと浮かんでいた。 「はっはっ! すげぇすげぇ! こりゃ近づけねぇなぁ!?」  曲芸のような身軽さで水龍をかわしながら、リザは高笑いを飛ばす。  たかが水……と侮れる威力ではなかった。水龍が食らいついた建物は刃物で抉られたかのように綺麗な切り口をしており、それが次の瞬間には水の圧力で粉々に蹴散らされているのだ。あれに人間が巻き込まれれば肉片も残るまい。  一方で闇を操りアーチェの水龍を防ぐセリカは、苛立ちを抑えきれないといった様子で歯噛みしていた。 「どいつもこいつも………っ!! 生徒会長サマがどうして私の邪魔をするのかしら!?」  邪魔をするのは当たり前だろう。と突っ込みを入れるものは居ない。尤も生徒会長の責務として調停に来たのではなく、ただ一緒になって暴れているだけなので邪魔という表現は正しいかもしれない。もしくは大迷惑だ。
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