最終章『炎帝』

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 体がバラバラになるような衝撃に耐え、敵の猛攻を中央を真っ向から踏破して己の間合いへと踏み込んでやった。……『踏み込まされた』。  アーチェの口許に浮かんだ歪みに嫌な予感を覚えて踏み留まろうとした時には既に手遅れだった。足下の水が待ち構えていたように飛びはね、水の壁によってリザの退路が絶たれる。 「(やべぇ! 誘われた……っ!!)」  水の壁はそのままばっくりとリザを頭から飲み込み、そのまま進行方向へ押し流す。アーチェの鎮座する水の球体に取り込まれる形でアーチェの掌の中へ囚われてしまった。 「こうして檻の中でもがいているといよいよただの獣ね。」  リザは水の牢獄を破るべく腕を振り回すが、その水が鉛のように重たい。水飴のような粘度をもってまとわりつく水はリザを捕らえて離さず、深海の底に沈められたような圧力は一切の抵抗力を奪っていく。 「お前ならこう来るだろうと思ったよ。まともな人間ならやろうとは思わないし、例え実行してもミンチになるだけなんだがな……… だがお前はやる。そして"できてしまう"。」  『大したバカだよお前は』と愉快げに喉をならしながらリザの顎を指先で叩く。あからさまに機嫌を損ねたリザが物理的に噛みつこうと首を伸ばすが、空振りした歯がカチンと打ち鳴らされる。  それが精一杯の抵抗。地面を蹴ることも出来ず、水の牢獄の中で身体能力を潰された。ほとんどの魔法も封じられた。たとえリザのような実力者であれ、無策でここに囚われた時点で脱出は不可能である。  そう、一人であったならば。 「嘗められたものね。私をフリーにするだなんて。」  
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