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ふらふらと足下がもつれ、セリカはその場に片膝をついて腕を押さえる。白い骨の飛び出した傷口からは、押さえた指の隙間から血液がどろどろと止めどなく溢れてくる。
「許さない許さない許さない………っ!!」
呪詛にも似た恨み言を吐き出しながら、大粒の涙をぼろぼろ流す。耐え難い痛みをおして肉体を支えるのは煮えたぎるほどの怒りか。
視界の隅には己をこんな目に合わせた者達が地に伏していた。だが収まらない。奴等の手足を折って引きずり倒して靴の裏まで舐めさせてやらなければ気が済まない。
痛む体を引き摺るように立ち上がり、それと示し合わせたように伏していた者達が動いた。
「ハハァァア………」
体内に収まりきらない熱を放出するように息を吐きながら、むくりと体を起こしたのはリザ。
そして時を同じくしてアーチェも立ち上がっていた。調子を確かめるように首の骨を鳴らしているが、先程から瞬きを一度もしていない。瞳孔まで開き、所謂ところの完全にイッちまってる目である。
そうして三者は立ち上がった。
皆かなりの深手だ。大技を受けた上に片腕をへし折られているセリカ、ごっそりと魔力を削られた挙げ句に馬鹿力でぶん殴られたアーチェ、そしてこの中で最も攻撃を受けているリザ。
誰もが若くして超一級の実力者。追い詰められるどころかまともに手傷を負ったことすらあるのか怪しい。人生で初めての窮地、満身創痍………にも関わらず、彼女らの眼は誰一人として折れていなかった。
傷を受けて尚、燃え上がる。
「ヤベェよ………ヤベェよヤベェよオイ!! 楽しくなってきちまったなぁぁオイ!!」
「もう許さない……土下座しても、泣いて謝っても………もう許さないっ!!!」
「アーッハッハッハッハ!!! もう知らないわーっ!! 貴女達をぶち殺せるなら街がどうなろうがもう知ったこっちゃないわーっ!!!」
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