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「リザベール=フレイラ………奴は………『化物』です」
ほう、とカインが愉快げに目を細める。
「今はまだ卵に過ぎないでしょう。しかし私はアレが恐ろしい。奴は今にも殻を砕こうとしています。乱暴者の子供のような人格のまま力だけが成長するとなると……考えたくはありません」
ライナの脳裏によぎるのはリザが自分の剣を握った時の表情だ。巨大な怪物を人形に押し込めたような底知れぬ重圧。
「くく………雷帝ライナをして化物とまでいわせるか、面白いね。実に面白い」
「陛下、私はまだその名を名乗る資格はありません」
「いいじゃないか。どうせ近いうちに席が用意されることになるさ」
ライナは困ったように、しかし評価されていることに喜びを隠せず眉尻を下げる。
国王カインは話を区切るように万年筆の先端でコツコツと机を叩くと、誰に言うでもなく
「さて………そんな才ある三人の若者への沙汰はどうなる?」
如何に高位の貴族とはいえ、あれだけの惨状を引き起こした実行犯ともなれば何らかの処罰は避けられまい。
だがこの一件において最も不味いのはどのような展開か。カインの頭には既にそのシナリオが見えていた。そしてそれだけは何としても防がなければならない。
「マイルズ君」
「はっ」
「言い分けは何でも構わん。彼女らに過度な不利益が出ないように情報統制を捩じ込んでおけ。どうせバレはするだろうが、建前だけでもな」
「お任せください」
一番不味いのはこの件が大事になって彼女達が糾弾されることだ。それは感情的な意味ではない。もっと単純な国家への損益の話だ。
万が一にも彼女らが敵に回ることがあってはならない。犯罪組織に与するか、最悪他国に回られたらとんでもない事態に発展しかねない。『帝』一人の引き抜きは国境線の変動に相当すると言っても過言ではない。それは歴史が証明していた。
「とはいえ監視………お目付け役程度は必要になるか。学園の者だけに任せるのも酷な話だろう、そこでライナ君、彼女らの件は君に一任する」
「はっ! ……………………は?」
流れ変わったな。
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