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「金かぁ……。ならよ、思い切って働くか?日雇いなら手っ取り早く金を稼げそうだし。スナイパーライフルとか使ってみたいよな、やっぱり」
「いいけどお前それ、あいつらと一緒に働くって事だぜ、限度があるだろ。いくら楽に稼げるからって人としてのプライドってもんは捨てられないよ」
それもそうだな、と大柄な男が同意を示すように大きく頷いたタイミングで俺は立ち上がった。
既に2人は目と鼻の先だ、建物を出て左にしばらくの所を歩いていた2人を呼び止める。怪訝そうな顔をする2人だが、俺が記者で取材をさせて欲しいと言うと案外簡単に了承してくれた。
俺は黒縁メガネをぐいと上げ、グシャグシャの頭に載せると自己紹介から始めることにした。
「お忙しい所をすいませんね。お2人は先ほどハント場から出て来ましたよね?
俺は雑誌レ・パントで『人とクローンの平等性』についての記事を書かせてもらってます、安井 弘です」
20年前に確立されたクローン技術は、それに関する法律がしっかりと制定されないままに社会に浸透し、今や日常のあらゆる所に溶け込んでいた。
「ハント場」は世論の過半数が賛成に傾いたことで解禁された「クローン・ハント」の実施会場の俗称だ。
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