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その2-死前長考-
夏の日差しが道路を焼いて、上を歩けば上下から熱が襲い掛かってくる暑い暑い日
しかし今日の彼のテンションは高かった、理由は言うまでもない
「よっしゃ!17匹目!」
今日の彼はついていた、それだけである
「おー、お兄さん釣れてる…ね、うん」
「あたぼうよ!」
「どういう意味だい?」
「あー、あたりまえって意味だ」
「なるほど、でもいつもは釣れてないんだから当たり前じゃないよね」
「…そうだな」
九州出身なのに江戸弁が飛び出すほどハイテンションになっていたが、少し落ち着いたようだ
いつも通り彼に話しかけたのは中学生くらいの子供、今日もゴーグルをかけ、フードをしっかり被った長袖長ズボンである
「いつも思うんだが、お前暑くないのか?」
「暑いけど、日差しに弱いんだ」
「なるほど」
ひょっとするとこの子供が自分に懐いたのは遊び相手が少ないことだけが原因ではないのかもしれない、と彼は考えるがそもそもこんな考えを人に聞きまくるような奴だったら友達は少ないだろうとも思い、少し子供を見る目が温かくなった
「どうしたんだい?そんな目をして」
「いや、何でもない」
「変なお兄さんだね、釣れすぎて舞い上がってるのかな」
「否定はしない」
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