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世界の終わりと始まりを眼にした、唯一の生命体であるぞ!
信じられんか?
ならばそれで我輩の腹を切開してみるといい。
袖の中に仕込んでいるそれだ」
どうやらメスを持っているのがバレていたらしい。
相当目が効くようだ。
変人だけど、油断は出来ない。
シュテフタッドは服代わりのボロ布をはだけさせ、腹をせり出させる。
本当に、切られるつもりなのだろうか?
そんなはずないでしょ。
きっと私が近づいたところで……なんて考えているうちに、私は手を掴まれてしまった。
「貸りるぞ」
何が起きているのか、脳の処理が追いつかない。
気が付いた時には、目の前に腹を裂かれた男が立っていた。
何故か血液が一滴も垂れていない。
「納得したか?
声すら出さぬか。
ふふっ、お嬢様には少々刺激が強すぎたな」
……………………美しい。
幾重にも折り重なった肉の管が脈動しあい、歯車のようにこの男を動かしている。
それを彩るように、形を崩さぬように、骨と皮が枠を作り出している。
生きている。
目の前のこの人体模型は生きているんだ。
それはまさしく、究極の標本だ。
「少し喋り過ぎたな。
腹が減って仕方がない。
ククーデリカ嬢よ、すまぬが少し血液を分けてはくれまいか」
私は机の引き出しを引き抜く。
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